ワイン売り場で年号を見て、「この年は当たり年なんだろうか」と気になったことはないでしょうか。
結論から言うと、ヴィンテージは知っておくと選びやすくなる情報ですが、初心者のうちは優先順位がそこまで高くありません。むしろ「気にしなくていい場面」を知っておくほうが、買い物が楽になります。
この記事では、ヴィンテージが何を指すのか、当たり年という言葉の中身、そして年号より効いてくる要素を整理します。
ラベル全体の読み方はワインラベルの読み方で扱っているので、あわせてどうぞ。
ヴィンテージ=ブドウを収穫した年
まず定義です。ラベルに書かれている「2020」のような年号は、ブドウを収穫した年を指します。
瓶詰めの年でも、お店に並んだ年でもありません。ここを取り違えると、あとの話が全部ずれます。
なぜ収穫年を書くのか。理由はシンプルで、ワインの味がその年の天候にかなり左右されるからです。
- 日照が多く暑い年 → ブドウがよく熟し、果実味が濃く、アルコールも高めになりやすい
- 雨が多く冷涼な年 → 糖度が上がりにくく、酸が残って軽やかな仕上がりになりやすい
- 収穫期に長雨や雹(ひょう)があった年 → そもそも収穫量が落ちる
同じ畑・同じ造り手でも、年が違えば別のワインになる。年号は「そのボトルがどんな気候の下で生まれたか」を示すラベルなのです。
ヴィンテージのないワインもある(NV)
ラベルに年号がないものを見かけたら、それは NV(ノン・ヴィンテージ) かもしれません。
これは複数の年に造られたワインをブレンドしたもので、品質が低いという意味ではありません。むしろ狙ってそうしています。
代表がシャンパーニュです。シャンパーニュの産地は冷涼で年ごとの出来にばらつきが出やすいため、過去の年のワイン(リザーヴワイン)を混ぜて、毎年同じ味わいに整えるという設計をとる造り手が多くあります。
つまりNVは「その造り手の定番の味」。毎回同じ味を期待して買えるのが強みです。
逆に、特に出来のよかった年だけ、その年のブドウだけで造るものをヴィンテージ・シャンパーニュと呼びます。こちらは年ごとの個性を楽しむものです。
スパークリングの選び方はスパークリングワインのおすすめも参考にしてください。
「当たり年」は、産地ごとに違う
ここがいちばん誤解されやすいところです。
当たり年は世界共通ではありません。 天候は地域ごとに違うので、同じ年でもボルドーは良くてブルゴーニュは難しかった、ということが普通に起きます。北半球と南半球では収穫の時期そのものがずれます。
だから「◯◯年は当たり年」という言い方は、必ず産地とセットでなければ意味を持ちません。
産地ごとの出来をまとめたヴィンテージチャートという表があり、輸入業者や専門メディアが公開しています。使い方のコツは3つです。
1. 必ず産地の行を見る 全体の平均点のような数字を見ても、買おうとしている1本には結びつきません。
2. 「飲み頃」の欄も見る 点数が高くても「まだ早い」ものがあります。長期熟成型の赤は、若いうちは渋みが立って本来の姿ではないことがあります。
3. 発行元によって評価が違うことを前提にする チャートは絶対の物差しではなく、評価者の見立てです。複数を見比べると、そのばらつき自体が情報になります。
それでも、年号より効くものがある
正直なところを書きます。数千円までの価格帯で日常的に飲むワインでは、ヴィンテージの差より、次の2つのほうが体感に効きます。
① 造り手の差
同じ年・同じ産地でも、造り手によって仕上がりはまったく違います。難しい年でも良いワインを造る生産者はいますし、恵まれた年に平凡なものが出ることもあります。
初心者のうちは、年号を追うより、気に入った造り手を1つ覚えるほうが再現性が高いです。
② 保存状態
これが見落とされがちです。どんなに良い年のワインでも、高温の場所に長く置かれていたボトルは、その分だけ傷んでいます。
- 直射日光の当たる棚に立てて並んでいた
- 夏場に空調のない倉庫を経由してきた
- 何年も常温で置かれていた
こうした履歴は、ラベルの年号からは分かりません。同じ1本を選ぶなら、年号の良し悪しより、きちんと管理されている売り場を選ぶほうが確実です。
家での保存についてはワインの保存方法、開けたあとの扱いは開けたワインの保存にまとめています。
年ごとの差は、以前より縮まったと言われる
もうひとつ、覚えておくと肩の力が抜ける話があります。
栽培と醸造の技術が進んだことで、かつてほど「外れ年=飲めない」という状況にはなりにくくなったと言われます。畑での作業の精度が上がり、収穫の選別も丁寧になり、条件の厳しい年でも一定の水準にまとめる技術が広がったためです。
もちろん年による違いは今もあります。ただ、「この年は避けたほうがいい」と身構えるより、その年らしさとして楽しむほうが、日常のワインとは付き合いやすいはずです。
ヴィンテージを気にしたほうがいい場面/しなくていい場面
最後に整理します。
気にしたほうがいい場面
- 高価格帯の長期熟成型ワインを買うとき(飲み頃の判断が要る)
- 生まれ年・記念年のワインを贈るとき(年号そのものが目的)
- 同じ銘柄を飲み比べて、年による違いを味わいたいとき
気にしなくていい場面
- 数千円までの、その日に開けるワイン
- NV表記のスパークリング
- 料理に合わせて選ぶとき(年号より品種と産地のほうが効く)
贈り物としてのワイン選びは予算別ワインギフトの選び方にまとめてあります。生まれ年のワインを探す場合は、その年が飲み頃かどうかをお店に確認するのが確実です。
よくある質問
Q. 古いヴィンテージほど価値が高いのですか? A. そうとは限りません。長期熟成に向く造りのワインは年月で複雑さを増しますが、多くのワインは早めに飲むことを想定して造られています。古ければ良いという単純な関係ではありません。
Q. ヴィンテージチャートはどこで見られますか? A. 輸入業者や専門メディアが公開しています。発行元によって評価が異なるので、複数を見比べるのがおすすめです。
Q. 日本のワインにもヴィンテージはありますか? A. あります。日本国内で収穫したブドウのみを原料とする「日本ワイン」の表示ルールは国税庁が定めており、収穫年の表示についても基準があります。
Q. 同じ年のワインを買えば、味は同じですか? A. 産地・造り手・畑が違えば別物です。年号は数ある要素のひとつで、それ単独で味を決めるものではありません。
参考
- 国税庁「酒税法及び酒類行政関係等」
- 日本貿易振興機構(ジェトロ)「農林水産物・食品 輸出支援情報」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。 ※特定の年・特定の銘柄の品質や価値を保証するものではありません。 ※お酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。妊娠中・授乳期の飲酒は避けてください。
