チリワインは、スーパーの手頃な価格帯でよく見かけるワインです。「安いのにちゃんと美味しいのはなぜ?」と気になった方も多いのではないでしょうか。

チリワインの安さについて確かめられたのは、関税・輸入時の単価・気候の3つです。 単価がなぜ低いのかの背景としてよく見かける「人件費が安いから」は、公式の資料で確かめられなかったので数えていません。税関や輸入元、チリの生産者団体の資料をもとに、代表品種・産地・ラベルの見方まで整理しました。

  • チリワインの安さについて確かめられた3つのこと(根拠の資料つき)
  • 日本の輸入量でチリはフランスと首位を争っていること
  • 代表品種カルメネールと、主な産地の特徴
  • スーパーで選ぶときに見るラベルの表示

結論:チリワインの安さについて確かめられた3つのこと

先に全体を表にします。3つとも、公式の資料で数字や記述を確かめたものです。

確かめられたこと 中身 確かめた資料
① 関税が無税 日チリ経済連携協定で段階的に下がり、2019年4月から無税 税関の実行関税率表
② 輸入時の単価がもともと低い 2017年の1リットルあたり単価はチリ約321円、フランス約1,017円(当サイトで計算) 東京税関の特集資料
③ 収穫が安定しやすい気候 雨が年平均300mmと少なく、年ごとの出来の差があまりないとされる メルシャン(キリン)の解説

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①はいまではチリだけの話ではありません。後で説明するとおり、EUのワインも2019年から無税です。つまりいまのチリワインの安さは、関税よりも②の単価の低さに表れていると考えるのが自然です。


①関税:日チリEPAで12年かけてゼロになった

チリ産のボトルワインの関税は、2019年4月の実行関税率表から無税になっています。

日本とチリの経済連携協定(EPA)は2007年9月に発効しました。税関の解説では、ボトルワインは「12年間での段階的関税撤廃」とされています。実際に税関が公開している実行関税率表を年ごとに見ると、次のように変わっていました。

実行関税率表 チリ産(2リットル以下の容器・スティルワイン)
2018年4月版 1.2%又は125.00円/lのうちいずれか低い税率
2019年4月版 無税
2026年8月8日版 無税

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※この章の税率は 税関「実行関税率表」(第22類)と「日チリ経済連携協定」より

EPAを使わない国のワインには、1リットル67円以上の関税がかかる

EPAの無い国から輸入すると、同じワインにかかる税率(WTO協定税率)は「15%又は125円/lのうちいずれか低い税率。ただしその税率が67円/lを下回る場合は67円/l」です。

つまり安いワインほど、最低額の「1リットルあたり67円」が効きます。750mlのボトルなら約50円です。輸入時の価格が1リットル数百円のワインにとって、この差は小さくありません。

ただし、2019年4月版の同じ表では、EUの欄もすでに「無税」でした。フランスやイタリア、スペインのワインも関税はかかっていません。関税ゼロは、いまではチリだけの強みではないということです。

※この章の税率は 税関「実行関税率表」(2019年4月版・2026年8月8日版)より


②輸入時の単価:1リットルあたりで比べるとフランスの約3分の1

輸入された時点の価格で比べると、チリ産はもともと安いワインが中心です。

東京税関の特集資料には、2017年に日本へ輸入されたボトルワインの国別の数量と金額が載っています。これを割り算して、1リットルあたりの単価を当サイトで計算しました。

原産国 輸入量(KL) 輸入額(億円) 1リットルあたり(計算) 750mlあたり(計算)
チリ 55,519 178 約321円 約240円
スペイン 19,761 60 約304円 約228円
オーストラリア 7,144 33 約462円 約346円
イタリア 33,590 171 約509円 約382円
フランス 45,523 463 約1,017円 約763円

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※この章の数値は 東京税関「ボトルワインの輸入」(平成30年10月24日)より。単価は当サイトの計算

読み取れることは2つあります。

  • チリ産は数量で首位なのに、金額ではフランスの半分以下でした。安い価格帯のワインが大量に入っている、ということです。
  • 単価の低さはスペインも同じ水準です。「安くて美味しい産地」としてチリとスペインがよく並べられるのは、数字の上でも筋が通っています。

ただし、「輸入時の単価が低い」は「安い」をほぼ言い換えただけの事実です。なぜ単価が低いのかまでは、税関の資料からは分かりません(背景としてよく言われる人件費などは、下の「③気候」の後で触れるとおり確かめられていません)。

注意点もあります。これは輸入された時点の平均の価格で、店頭の価格ではありません。ここに酒税や物流、お店の利益が加わって棚に並びます。また、高級ワインも安いワインも混ぜた平均なので、「チリには高いワインが無い」という意味ではありません。データは2017年のもので、いまの単価はこれと違う可能性があります。

東京税関の同じ資料は、チリワインの人気の背景として、業界の見方を3つ紹介しています。醸造技術が上がって品質が良くなったこと、品質のわりに安く買えること、EPAで関税率が低いこと、です。


③気候:雨が少なく、年ごとの差が出にくい

チリのブドウ産地は雨が少なく、病気や雨の被害がほとんどないため、年による出来の差があまり無いとされています。

メルシャン(キリン)の解説によると、チリは南北に細長い国です。ブドウを育てる中央部は砂礫質の土壌で、昼と夜の寒暖差が大きいとされます。

東のアンデス山脈、西の冷たいフンボルト海流、北のアタカマ砂漠、南の氷河。この4つが天然の壁になり、ブドウを害虫から守っているという説明です。降水量は年平均300mmほどと少なく、夏から収穫期にかけては灌漑(水を引いてくること)が必要になります。

毎年の収穫が安定すれば、生産量と価格も安定しやすいと考えられます。安いワインを大量に、同じ味で出し続けるには有利な条件です。ここは当サイトの推測で、資料が直接そう書いているわけではありません。

※この章の記述は メルシャン(キリン)「これでバッチリ!ワインの基礎知識 チリ」より

よく見るけれど、この記事では数えない説明

輸入時の単価がなぜ低いのかについて、「人件費が安い」「土地が安い」という説明をよく見かけます。ありそうな話ですが、当サイトではこれを裏づける公式の資料を見つけられませんでした。そのため、この記事では数えていません。


日本の輸入量では、フランスと首位を争っている

2リットル以下のボトルワインの輸入数量で、チリは2015年に初めてフランスを抜いて首位になりました。

東京税関の資料によると、比較できる1988年以降、2014年までは数量・金額ともにフランスが首位でした。2015年以降はチリが数量で上回り、2017年は過去最大の輸入量でした。

その後は、年によって首位が入れ替わっています。メルシャンがまとめた財務省の統計(スティルワイン・2リットル未満)を並べると、次のとおりです。

年 チリ(KL) フランス(KL) 数量の首位
2019年 47,213 47,118 チリ
2020年 49,101 45,254 チリ
2021年 40,379 44,991 フランス
2022年 42,799 43,804 フランス
2023年 38,368 37,463 チリ(構成比26.2%)

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※この章の数値は 東京税関「ボトルワインの輸入」/メルシャン「ワイン参考資料」(財務省関税局調べ)より

スーパーやコンビニの棚にチリワインが多いのは、この輸入量を考えれば自然なことです。


チリワインの代表品種と味の特徴

チリの主要な産地で、植えられている面積がいちばん大きいのはカベルネ・ソーヴィニヨンです。 生産者団体ワインズ・オブ・チリの産地データを見てみます。マイポ・コルチャグア・マウレ・カチャポアルの4地区すべてで、面積の1位はカベルネ・ソーヴィニヨンでした。

代表的な品種を、面積の大きい産地と、公式の説明とあわせて整理します。

品種 色 面積の大きい主な産地 公式の説明から
カベルネ・ソーヴィニヨン 赤 コルチャグア(11,928ha)、マウレ(10,568ha)、マイポ(5,517ha) マイポ産は複雑で、しっかりしたタンニン(渋み)
カルメネール 赤 コルチャグア(3,657ha)、マウレ(2,201ha)、カチャポアル(2,003ha) まろやかな渋みとしっかりしたコク。マウレ産はスパイスや黒胡椒の香り
メルロ 赤 コルチャグア(3,132ha)、マウレ(2,865ha) カチャポアル・コルチャグアでは、カルメネール・カベルネと並ぶ主力
ソーヴィニヨン・ブラン 白 クリコ(4,570ha)、マウレ(2,726ha)、カサブランカ(2,235ha) 海に近い冷涼な産地で、ミネラル感と鮮やかな酸
シャルドネ 白 マウレ(2,100ha)、コルチャグア(1,935ha)、クリコ(1,597ha) リマリ産は新鮮でミネラル感のある高品質なもの

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※この章の面積と産地の説明は ワインズ・オブ・チリ「Wine Regions Map」、カルメネールの味わいは メルシャン(キリン)「カルメネール」より

カルメネール|チリを代表する赤

カルメネールは、メルシャンが「南米チリの代表ブドウ品種」と紹介している赤ワイン用の品種です。

メルシャンの解説によると、もとはフランスのボルドー地方で栽培されていた品種です。いまのボルドーではほとんど栽培されておらず、チリで栽培に成功して注目されるようになりました。香りはカシス・プラム・コーヒー・ビターチョコレート、味わいはまろやかな渋みとしっかりしたコク、と紹介されています。

面白いのはその経緯です。エノテカの解説によると、カルメネールはチリへ持ち込まれてから150年近く、メルロと勘違いされていました。DNA鑑定でチリのメルロの一部がカルメネールと識別されたのは1994年です。

※この節の経緯は エノテカ「チリで栽培されているカルメネールってどんなブドウ?」、味わいは メルシャン(キリン)「カルメネール」より

品種ごとの味の違いは、赤ワインの主なぶどう品種と選び方と白ワインの主なぶどう品種と選び方でも整理しています。


チリワインの主な産地(北から南へ)

チリのブドウ畑は南北に長く、北の砂漠のそばから南の冷涼な地域まで広がっています。 畑が特に多いのは中部です。ワインズ・オブ・チリによると、ブドウ畑の37.9%がマウレ州、32.7%がオイギンス州にあります。

地区(北から) 特徴(ワインズ・オブ・チリの説明から)
コピアポ・ワスコ アタカマ砂漠のそば。最北のワイン産地
エルキ・リマリ 乾燥した気候。リマリは石灰質の土壌とシャルドネで知られる
アコンカグア アンデスから太平洋へ流れる川沿い。内陸は赤、海側は冷涼な気候の品種
カサブランカ・サンアントニオ 太平洋の影響を受ける冷涼な産地。白ワインの主要産地
マイポ 地中海性気候。カベルネ・ソーヴィニヨンの赤で知られる
カチャポアル・コルチャグア 赤が中心。カルメネール・カベルネ・メルロが主力
クリコ ソーヴィニヨン・ブランとカベルネ・ソーヴィニヨンが主な品種
マウレ チリ最大のワイン産地。古い畑も多い
イタタ・ビオビオ・マジェコ 南部の冷涼な地域。伝統品種のパイスや、ピノ・ノワール

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※この章の記述は ワインズ・オブ・チリ「Wine Regions Map」「Winegrowing Regions」より

表の上ほど乾燥し、下ほど雨が多く冷涼になります。ビオビオは年間の雨量が1,100mmに達するとされています。同じ「チリワイン」でも、北と南では気候がかなり違うということです。


スーパーで選ぶときのラベルの見方

チリワインは、ラベルの正面に品種名が書かれていることが多く、味を想像しやすいのが特徴です。

メルシャンの解説では、チリの原産地呼称法(1995年施行)はラベルの表示にもルールを定めています。

  • 品種名:同じ品種のブドウを75%以上使えば表示できる。複数の品種を書くときは、15%以上使った品種を多い順に3つまで
  • 産地名:定められた栽培地域の中の、同じ地域のブドウを75%以上使えば表示できる
  • 収穫年:同じ年のブドウを75%以上使えば表示できる
  • D.O.(原産地呼称):法律で定めた栽培地域・品種のブドウから造られたワイン

※この章の表示ルールは メルシャン(キリン)「これでバッチリ!ワインの基礎知識 チリ」より

たとえば「Carmenère」と書いてあれば、そのワインの75%以上はカルメネールです。好みの品種を1つ決めておくと、初めて見る銘柄でも方向性を外しにくくなります。ラベル全体の読み方はワインラベルの見方で詳しく解説しています。

好みから選ぶ目安

  • 渋みが苦手な方:白のソーヴィニヨン・ブランやシャルドネから
  • しっかりした赤が好きな方:カベルネ・ソーヴィニヨン
  • チリらしさを味わいたい方:カルメネール

ほかの国と比べながら選びたい方は、スーパーで安くて美味しいワインを選ぶ方法の産地の比較表も参考にしてください。同じ新世界の産地としては、南アフリカワイン入門もあわせてどうぞ。


よくある質問

チリワインはなぜ安いのですか?

安さについて確かめられた事実は3つです。1つめは関税です。日本とチリの経済連携協定(EPA)でボトルワインの関税は段階的に下がり、2019年4月の実行関税率表から無税になっています。2つめは輸入時の単価で、東京税関の資料(2017年)から計算すると、チリ産は1リットルあたり約321円、フランス産は約1,017円でした。3つめは気候で、雨が少なく年ごとの出来の差が小さいとされます。

チリワインの関税はいつゼロになりましたか?

日チリ経済連携協定は2007年9月に発効し、ボトルワインは12年間での段階的な関税撤廃とされました。税関の実行関税率表では、2018年4月版のチリの欄が「1.2%又は125.00円/lのうちいずれか低い税率」、2019年4月版では「無税」になっています。なお2019年4月版では、EUの欄もすでに無税でした。

日本に輸入されるワインで、チリは何番目に多いですか?

2リットル以下のボトルワインの輸入数量では、2015年にチリがフランスを抜いて初めて首位になりました。その後はフランスと首位を争っており、メルシャンの資料では2021年と2022年はフランスが上回り、2023年はチリが1位(構成比26.2%)でした。金額では、東京税関の2017年の資料でフランスが首位です。

カルメネールとはどんなブドウですか?

もとはフランスのボルドー地方で栽培されていた赤ワイン用の品種で、現在のボルドーではほとんど栽培されていません。エノテカによると、チリでは長くメルロと混同されており、1994年のDNA鑑定で一部がカルメネールと識別されたとされます。メルシャンは、まろやかな渋みとしっかりしたコク、カシスやプラム、コーヒーのような香りの品種として紹介しています。

チリワインのラベルは何を見ればいいですか?

まず品種名を見ると味の方向が想像しやすくなります。チリの原産地呼称法では、ラベルに品種名を書くには同じ品種のブドウを75%以上使う必要があり、産地名と収穫年も同じく75%以上が条件です。D.O.(原産地呼称)の表示があれば、法律で定められた栽培地域のブドウから造られたワインです。

まとめ

  • チリワインの安さについて確かめられたのは、関税・輸入時の単価・気候の3つ
  • 関税は2019年4月から無税。ただしEUのワインも同じく無税なので、いまはチリだけの強みではない
  • 輸入時の単価は、2017年で1リットルあたり約321円。フランスの約3分の1で、スペインと同じ水準
  • 輸入数量では、2015年以降フランスと首位を争っている
  • 代表品種はカベルネ・ソーヴィニヨンと、チリを象徴するカルメネール
  • ラベルの品種名は75%以上その品種を使っている印

次にスーパーでチリワインを手に取ったら、ラベルの品種名と産地を見てみてください。品種と産地を手がかりにすると、同じ価格帯の中でも選び分けがしやすくなります。

飲酒についてのお願い:20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。お酒は適量を、ゆっくり楽しみましょう。妊娠中・授乳中の方、車や自転車の運転前、服薬中の方の飲酒は避けてください。アルコールの影響には体質による個人差があります。不安がある場合は、無理をせず医師等の専門家にご相談ください。


この記事を書いた人

ワインの扱い方 実践ノート 編集部。保有資格はなく専門家ではないため、税関・輸入元・生産者団体などが公開している資料を突き合わせて整理しています。数字は資料の原文で確かめたものだけを載せ、計算した値は計算と明記しています。

最終更新日:2026年9月28日


出典


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